キミの愛はどこにありますか。
ラブレスボゥイ
「……………で?」
「や、で? とか聞かれても何もないんだけど」
放課後の教室。辺りは静まり返っていて、校内には部活動に励む生徒しか残っていない。そんな中私の(一応)彼氏な、跡部景吾くんはどうやら生徒会の仕事をためているらしく、今もせっせとアンケート(いつやったんだこんなの)の集計をしている。
机にどさりと置かれたプリントの山が、彼の忙しさを物語っている。(と思う)
「だったら、くだらねえこと言うな」
「私から言ったわけじゃないじゃん」
「お前からだよ、バーカ」
「(景吾から振ったくせに…!)」
あからさまにため息ついて、眉潜めながら手を動かす。そんなに面倒くさいんなら、生徒会長なんてならなきゃいいのに…って思ったけどあえて言わなかった。
だって更に期限悪くなること間違いなしですから。わかりやすい人間ですから。景吾って。
「ってゆうか、やっぱり私手伝おうか?」
目の前で忙しなく働く姿見て、放っておけるほど非道な性格はしていません。
ドラマの再放送見たいから早く帰りたいけど、でもやっぱり景吾と一緒にいたいしね。
帰るなら二人でくっついて帰りたいしね。
と、決して口には出しませんが、割と可愛いことを内心で思ってる私に向かってこの人は。
即答で、何の迷いも見せずにずばりと言い放った。
「お前効率悪いから邪魔」
「………………」
「つーか喋るな、うぜぇ」
「(…そこまでですか…!)」
ムッとする。ちょっと、カチンときた。
一人でやるより、二人のが早いって考え方を、この男はしないのかとか。
(確かに私は効率悪いですが)
つか、その前に愛しい彼女に向かってそんなこと言って良いのだろうかとか。
(私が傷つくとか思わないのかしら)
色々思ったけど、そんなこと目の前のこの男に言えるはずがない私は、
内心で悪態をつくことしかできない。(言った後が怖いし)
(それともなーに? そんなに時間延ばして私を拘束したいんですか)
…………………………。
(切なくなりました)
「……じゃあ、私帰るよ?」
「ああ」
「(引きとめてくれないのかよ!)」
ガタンと、椅子を鳴らして立ちあがる私には目もくれずにせっせと働く。やっぱり、あれなんでしょうか。
私が今ここで帰って、玄関前のさよならのちゅーが出来なくなってもこの人は寂しいとかは思わないんでしょうか。(や、決して毎日してるわけではないですけど)(この間初めてだ!)(…やっだ思い出しちゃった…!)
(そう、友達には有り得ないとか言われたんですけれども)(つか私もそう思ってたんですけど)
(跡部景吾くんは意外と奥手☆でした!)
(だって、ちゅーが三ヵ月付き合ってからだよ?)
(………わたし、もしかして大事にされてますか)(きゃっ!)(自分で言っちゃった…!)
「………………、」
「(え!)(なんだろう、やっぱり寂しい?)」
と期待して景吾の方を向くと、景吾はその綺麗な顔を少しも歪めずに、
「お前さっきから百面相しててキモいんだけど」
と言った。(……負けない!)
「あ、……そうっすか」(脱力)
「ああ、怒るんだかにやけるんだかどっちかにしろ」
「………(景吾なんて……!)」
「アーン?」
「……うん、わかりました……」
「わかれば良いんだよ」
……………………ええ私、わかってました。わかってましたよ景吾。
景吾は、ほんとに遠慮ない人で、思ったことなんでも口にするような嫌な男だけど、
それをするのは本当に景吾が信頼してる人間だけだってこと、ちゃんとわかってます。
だから、別に切なくなんてないの。
す き だ か ら ね !
「………でも、」
「あ?」
「そのキモいのがあなたの彼女なんですよ」
「知らねえな」
「うわ、ちょっとあなたそれは酷いよ!」
「つかお前さっさと帰れ」
「……(景吾って…!)」
…………いつか、あなたの愛が見えますか。
(がんばれあたし!)